使うほどに愛着を増す 器の秘密
13代目となられる田原陶兵衛工房、その歴史を教えてください。
田原陶兵衛さん(以下、田原):萩焼の歴史は、豊臣秀吉の朝鮮出兵に遡ります。秀吉は様々な技術者を日本に連れ帰り、その中に陶工が多かったようです。秀吉と共に朝鮮に渡った毛利輝元が、当時城のあった広島で焼き物を始めました。当家の先祖は広島で、朝鮮の陶工から技術を教わったようです。その後、関ヶ原の戦いで毛利は敗れて萩に移るわけですが、当家も毛利家と共に萩に移って焼き物を造り、ここに萩焼が始まりました。
秀吉が持ち帰った大陸の技術と、日本の柔らかな土が出会って生まれた萩の茶碗。江戸時代、茶人達に長く愛され、その美意識を体現した器は、今もなお登り窯が並ぶ小さな谷で営々と形づくられている。 400余年に渡りその火を守り続ける窯元の一つ、田原陶兵衛家。13代目となる現当主が大切にしてきた物作りの心とは何か。そして今、萩焼を襲う過去最大の危機、その先にどんな未来を見据えるのか、お話をうかがった。