九谷焼(くたにやき)とは?歴史・特徴・実際に見られる場所を解説

石川県で人気の伝統工芸品のひとつである「九谷焼」。 美しい見た目が特徴の陶磁器は、世界中にファンがいるほど大人気です。 豪華絢爛という言葉が似合うその華やかさの秘密や歴史などをじっくり紐解いていきます。

九谷焼とは

九谷焼(くたにやき)は、石川県加賀市の伝統工芸品です。美しい色絵装飾が特徴で、世界的に人気がある陶磁器の1つです。1655年に石川県で始まり、前田家の美術・工芸品政策によって発展しました。 明治6年(1873年)のウィーン万博で九谷焼が紹介されたことがきっかけで、大量の九谷焼が海外へ輸出され「ジャパンクタニ」という名で愛されるようになりました。 2017年には石川県とシンガポールとのコラボレーション事業が実施されており、この事業ではなんと「スターウォーズ柄の九谷焼」の開発や九谷焼紹介コーナーの設置、そしてワークショップの開催などが行われました。 そんな世界で愛される九谷焼は、宮内庁の贈答品としても取り扱われており、チャールズ皇太子の御成婚祝としても献上されました。 九谷焼の緻密で美しいデザインは世界中の人々を魅了し、高価な陶器を購入する外国人も増加しています。

九谷焼の特徴

九谷焼には、以下のような特徴があります。

華やかで美しい

九谷焼は、華やかで美しい陶磁器として知られています。五彩と呼ばれる赤・黄・緑・紫・紺青の5色で構成され、これらの色が組み合わされることで特有の鮮やかで繊細な美しさが生まれます。また、表現技法が多く、デザインの幅が広いのも特徴です。 例えば、赤色の絵具を使って細やかな描写を施す技法「赤絵」や、金色の装飾を施す技法「金襴手」によって、豊かな色彩表現を行えます。明治以降、欧米では「ジャパンクタニ」と評価されるほど、世界中で人気の陶磁器となりました。

陶器と磁器がある

九谷焼は、様々な種類の粘土と高温焼成技術を組み合わせることにより、陶器と磁器の両方を生成することが可能です。 例えば、粘土を主とした原料を1,100〜1,300℃で焼成することで、柔らかく吸水性がある陶器の九谷焼になります。 一方で、粘土に長石などの石粉を加えた原料を1,300℃以上の高温で焼成すると、硬くて透明感がある磁器の九谷焼になります。製造工程によって見た目や特性が異なるため、用途に応じて陶器か磁器かを選ぶのが好ましいですね。

時代ごとに作風が異なる

九谷焼は、350年以上の歴史の中で様々な技術や作品の影響を受けてきたため、作られた時代によって作風が異なります。 例えば、江戸時代には、古九谷や吉田屋などの様式が確立され、五彩を用いた大胆な絵付けの九谷焼が生まれました。明治時代には西洋の技法が取り入れられ、新しい色彩技法「彩色金襴手」を使った作品が登場しました。 昭和以降は、現代芸術の要素を取り入れた作品が制作されるようになり、用途や趣味に応じた多様なデザインの九谷焼が作られています。そのため、異なる時代に作られた九谷焼を並べて、時代背景や技法の違いを見比べるという楽しみ方もできます。

九谷焼の作風

九谷焼の作風をいくつか紹介します。

古九谷

古九谷は、江戸時代前期に生まれた九谷焼の作風です。本焼きした陶磁器の表面に顔料で模様を描き、再度焼成する「上絵付け」を行うことで、鮮やかな色彩の九谷焼になります。九谷焼の特徴である五彩を使った色鮮やかな作品を作れるため、主要な作風の1つとして人気を集めています。

木米

木米(もくべい)は、江戸時代後期に生まれた九谷焼の作風です。京都で陶器制作に専念して九谷焼きの再興に大きく貢献し、日本三大名工の一人として知られている青木木米によって生み出されました。 青木木米は窯の温度を火の音で判断していたため、耳が赤く腫れ上がり、最終的には聴力を失っています。それほど九谷焼に熱い思いを持っていた青木木米ですが、制作した美しい九谷焼は重要文化財に指定されるほど高い評価を受けています。

飯田

飯田屋は、天保2年(1831年)に生まれた九谷焼の作風です。飯田屋八郎右衛門によって作られた作風で、赤色を用いた繊細な描写が特徴的であるため、赤九谷とも呼ばれています。金彩が加えられた技法が用いられているため、気品高い美しさが特徴的です。

吉田屋

吉田屋は、文政7年(1824年)に生まれた九谷焼の作風です。五彩のうち赤色を使わない作風のため、青九谷とも呼ばれています。古九谷の窯が無くなった120年後に生まれた吉田屋は、その美しさと高い品質で古九谷と同じくらいの高い評価を受けました。

永楽

永楽(えいらく)は、安政・文久年間(1854〜1864年)に生まれた九谷焼の作風です。作品全面を赤色で下塗りした後、金色のみで装飾する作風で、龍や鳳凰などの模様が映えるという特徴があります。金と赤という色彩ということもあり、永楽の酒器は縁起が良いと言われています。 この作風を生み出した十二代永楽和全は、わずか5年という短い活動期間でしたが、美しさと特徴的な技法で九谷焼の歴史に大きな影響を与えました。

九谷焼に触れられる場所

実際に九谷焼を見たい方は、以下の3ヶ所に行ってみるのがおすすめです。

石川県九谷焼美術館

石川県九谷焼美術館は、2001年に開校された日本で唯一の九谷焼専門の美術館です。五彩や赤絵など、画風別に部屋が分かれているため、陶磁器の知識がない人でも作風の違いを感じられます。 2階には現代作家の作品が展示されている喫茶店があるため、家族や恋人と行くのもおすすめです。

能美市九谷焼美術館

能美市九谷焼美術館は、九谷焼の歴史や製造工程を学べる美術館です。五彩館と呼ばれる九谷五彩をイメージした場所に、文化勲章を受賞した作品など、江戸時代からの名品の数々が展示されています。 九谷焼の絵付けやろくろ体験ができるため、陶磁器を作る面白さも知れます。ウルトラマンやハローキティなどのキャラクター絵付け体験もあるため、子どもと一緒に行くのもおすすめです。

九谷セラミック・ラボラトリー

九谷セラミック・ラボラトリーは、石川県小松市にある九谷焼文化を体験できる施設です。2019年にオープンしたこの施設は、世界的に著名な隈研吾氏が建築設計を行ったことでも有名です。施設内には製土工場・体験工房・ギャラリーなどがあるため、見学や体験を通して九谷焼の魅力を感じられます。

まとめ

この記事では、九谷焼の歴史や特徴について解説しました。九谷焼は華やかで美しく、日本だけでなく世界的に評価されている陶磁器です。作られた時代によって作風が異なるため、興味がある人は美術館で作風を見比べてみてください。